子どもを連れて2~3年ぶりで動物園に行きました。
私が特に楽しみにしていたのは、2019年に新しくできた「チンパンジーの森」でした。
チンパンジーが暮らす自然環境をイメージして作られた、希少なスペースと聞いていたからです。
ひょいひょい身軽に高いところに登っていく姿、あちらこちらを気ままに場所を変えてひなたぼっこする姿、そして道具を使って食べ物を手に入れる姿など、さまざまな動きを楽しむことができました。
(カメラを忘れまして「宮崎市フェニックス自然動物園」のホームページから写真を拝借しています)
チンパンジーと「ヒト」は生物学的にとても近い存在で、DNAは98%同じだそう。
見ていても、人間に本当によく似ているなと思いました。
飼育員さんに、「早く食べ物をちょうだい」と急かす姿はまるで1~2歳の子ども。
地面に座ってボーっとしている姿は「こういうおじさん、いるいる(笑)」。
よく似て見えるチンパンジーなどの類人猿とヒトですが、大きな違いがあります。
その一つが、歩き方です。
ヒトは直立二足歩行をしますが、チンパンジーは基本的には四足歩行です。
急いで移動しようとしたときに、わずかに数歩を足だけで歩く瞬間がありました。
「おおっ!足だけで歩いてる!」とワクワク見ていましたが、すぐに手を地面に着けて歩き出しました。
「そういえば『肉単』の本で、ヒトの二足歩行を可能にしているのは大殿筋って書いてあったっけ…」
チンパンジーと私たちのおしりを比べると、チンパンジーのおしりは確かに貧弱です。
代わりに太ももの筋肉はモリモリと強力そうでした。
ヒトの運動発達の過程において、歩き出すまでに見られる運動は、生物の進化の過程をたどっているのではないかと言われてます。
足育クラスのとき、築山を高這いで登っていたら、2歳の子が「お猿さんのはいはいだ」と言いました。
高這いは、赤ちゃんが歩き出す前に見られる動きで、手のひらと足のつま先の4点で体を支えて前に進みます。
言われてみれば、確かにチンパンジーの移動する姿は高這いに似ていました。
とはいえ、少し違うところがありました。
チンパンジーの四足歩行では、主に体を支えているのは足で、手を補助的に使っていました。
そして、上半身よりもおしりが低めの位置にありました。
一方、高這いの姿勢は、手のひらとつま先の両方で体を支え、おしりが上半身よりも高い位置にあります。
この姿勢で前へ進むと、おしりと太ももの裏側、そしてふくらはぎの筋肉が使われているのを感じます。
類人猿の四足歩行と似ているようで少し違う、赤ちゃんの高這い。
わずかな期間しかしなかったり、一度もしないまま歩き出したりする子もいます。
でも、「ヒトの二足歩行」の確立のためには、この高這いの姿勢がとても重要なのではないだろうか。
高這いで、類人猿とヒトの大きな違いである「おしり」を育っているのではないだろうか。
高這いで使われる筋肉を調べてみたのですが文献が見つからず、あくまでも私の感覚で考えたことではありますが…。
『肉単』のコラム「何がヒトの二足歩行を可能にしているのか?」には、「おしりの筋肉『大殿筋』が歩く動作の中で片脚に体重がかかるときに活躍する」と書いてあります。
股関節を安定させ、体幹が前へ倒れないように支持するはたらきをするそうです。
二本の足で歩くために「おしり」の筋肉の発達が欠かせないことは、間違いないでしょう。
歩き出す前の赤ちゃんも、歩き出した子も、そして私たちも、いつまでも元気に歩き続けるために、チンパンジーとヒトで違う「おしり」の筋肉をしっかり使いたいですね。
(参考文献)
『肉単』 著:原島広至 監修:河合良訓 発行:エヌ・ティー・エス
『ひ弱になる日本人の足』 著:近藤四郎 発行:草思社
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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100歳まで歩ける足を育てる保育士
足育アドバイザーⓇ 成田あす香
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