きっかけは「息子の足の指の変形」と
「しゃがみ歩きができない子ども」
100歳まで歩ける足を育てる保育士、
日本足育プロジェクト協会認定 足育アドバイザーⓇの
成田あす香です。
みやざき足育センターのホームページをご覧いただき、
ありがとうございます。
小学校に上がった長男の足の指が変形していることに気づき、上履きを見直したことをきっかけに、周りの人に子どもの足の発達と靴の大切さを伝えるようになりました。
活動を始めてから10年目を迎えます。
私は、2010年に家族揃って東京から宮崎県の綾町へ移住してきました。
首都圏に比べて外遊びの環境が豊かで、足が育ちやすい環境だと期待していたところ、東京では2歳の子ができた「しゃがみ歩き」の動作が、3歳の子どもたちが上手にできない姿に出会いました。
疑問に思った私は、しゃがめずに転んでしまう子どもたちの姿を真似て考えました。
そして「宮崎は車社会で歩く機会が少なく、子どもの運動能力の発達に必要な運動量が確保できていないのではないか」と考えました。
公共交通機関が移動手段の東京では、家から駅までは歩かなければいけませんし、乗り換えでは階段の上り下りもたくさんあります。
しかし、車が移動手段の宮崎に来てからは、家の前から車に乗ることができるため、家から車まで、駐車場から建物までのわずかな距離しか歩かずに生活していることに気づいたのです。
しゃがめずに転んでしまう子どもたちの姿を真似ているとき、私は自分自身の運動能力の低下も知り、ショックを受けました。
人生100年と言われるこれからの時代、私も子ども達もこの足で最後まで幸せに生き切れる?
わが家だけの問題じゃない。
少子高齢化が進む宮崎で誰もが豊かに幸せに生きていくには、みんな元気な足でいることが欠かせないのでは?
そう考えるようになり、「足の力は、足を使わなければ育たない」ということを、宮崎県の全市町村に伝えに行こうと決めました。
足を育てることがあたりまえの社会を創る
「子どもに関わるすべての大人が、足の健康と靴の大切さを知り、足を育てることがあたりまえの社会にする」
この理念を胸に、宮崎県内を出張訪問して足育講座を届け、26市町村のうち20市町村、延べ4885人人の方に足育講座を聞いていただきました(2023年3月時点)。
「足の大切さ」「靴選びのポイント」「運動の大切さ」を学ばれたお父さん、お母さん、子どもに関わる先生方が、子どもたちの健やかな成長やご自身の足腰のトラブルの解決のため、毎日の生活の中に足育を取り入れられています。
講座を受講された方から町中でお声かけいただき、「あれから靴の履き方だけはちゃんと続いています。歩くのがとても楽です」と報告を伺ったときは、地道に活動を続けてきて本当に良かったなと思いました。
お子さんの股関節の発達に気がかりがあって家庭で足育を実践されたお母さんが、「お医者さんから経過観察OKと言われました」と報告してくださったことは、自分のことのように嬉しかったです。
「足育」を一人でも多くの方に知っていただき、より子育てを楽しみ、より喜びのあふれる人生を生きてほしいと心から願っています。
赤ちゃんから始まる3世代の足育
足育は誰にとっても必要なものですが、私は特に赤ちゃんを育てているお母さん、お父さんに足を育てる大切さを伝えたいと思っています。
その理由は2つあります。
1つは、人間だけがもっている「二本の足でまっすぐに立って歩く」という力は、歩き出すまでの発達を通して育っているからです。
もう1つは、新しい家族を迎えるというタイミングは、これまでの習慣や生き方を見直す機会であり、3世代のつながりが深まる機会だと思うからです。
生まれたばかりの赤ちゃんが、寝返りをするようになり、はいはいをするようになり、立ち上がり、はじめての一歩を踏み出す。
その発達の過程を、足の知識と愛情をもって守り育みながら、お父さん・お母さん・おじいちゃん・おばあちゃんも足を育て直し、いつまでも健康で元気に歩ける足でいられるようにする。家族そろって足下から健康な体になる。
少子高齢化が進む日本では、医療・介護施設の不足や社会保障費の負担増加が心配されますが、赤ちゃんの誕生をきっかけに3世代で足を育む家族が増えたら、きっと問題はかなり解決するはず。私はそう信じています。
生き生きと輝いて人生を歩む足を育てたい
足育アドバイザー®の養成機関である特定非営利活動法人日本足育プロジェクト協会では、足育を次のように定義しています。
足育とは、足の大切さを知り、足を健康に育てることを、家庭を中心とした日常生活の習慣、特に子育てに取り入れ、実践することです。
今、次のような足のトラブルが、大人だけでなく子どもにも増えています。
- 足の指がまっすぐに伸びず、丸まったままになっている
- 立った時に、床から浮いている指がある
- 足の親指が外側(小指側)に捻れて曲がっている
- 土踏まずがない(小学生以上)
また、保育園や幼稚園、学校などで子どもに関わる先生方からは、次のような声が寄せられます。
- 子どもの体力が年々低下している気がする
- 姿勢の良くない子が増えている
- よく転ぶ子ども、転んだ時に手が出ない子どもが増えている
- 「ずりばい」や「はいはい」などの小さな発達を飛び越えて歩き出す子がいる
このような問題の背景には、私たちが足と靴についての知識をもつ機会がなかったこと、生活スタイルや生活環境の変化で子どもたちが体を動かす機会を失っていることが関わっています。
一生を元気に歩き続けられる健やかな足でいるためには、足のはたらきや足の健康を保つための靴選びの知識をもち、体を動かす機会を増やそうと意識して行動することが欠かせません。
「足育」を生活の中で実践することは、子どもがケガやトラブルの少ない健康な体に育っていくだけでなく、自分自身を大切にし、他の人も思いやることのできる安定した心の育ちにつながると、私は考えています。
また、子どもの育ちに関わる大人が、子どもの手本となるために自ら足育を実践すれば、それまで悩んでいた足腰の不調からも解放されます。
体の痛みで思うように子どもと遊んであげられない日々が、子どもたちと思いっきり遊び笑顔があふれる毎日に変わります。
そして、年齢を重ねても自分に自信をもち、元気に好きなことができる体をつくることができます。
私の理想とする未来は、人生100年時代を誰もが生き生きと輝いて自分の信じた道を歩み続ける世の中です。
そのためには、生涯を元気に過ごせる身体がとても大切です。
いつまでも健康な身体でいるための新しい生活文化「足育」を普及・浸透する活動の展開に、これからも全力を注ぎます。
2023年4月 成田あす香